二筋の血 石川啄木

 今日は、石川啄木の「二筋の血」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 勉強ができずに泣いてばかりいた幼いころの石川啄木の思い出が記されます。
 学ぶことの楽しさを教えてくれた、藤野さんという幼年期の友だちがいて……これはほんとうにあったことなんだろうなあ、と思いました。美しい子供時代の描写に思いました。
 後半で記される二人の死について考えたこと、貧しい老婆の話、それから幼い友を悼む描写に、平熱の文学とは異なる感動がありました。そのあとにこの初版本の編者が記す〔生前未発表〕という記載に衝撃を受けました。子どもたちに読ませるために書かれたような、やさしい童話のような文体でありながら、生前の啄木はこれを発表しないことに決めていた。原稿を封印した理由はなんだろう、啄木にとって文学はどういう意味を持っていたのだろうか、と思いました。
  

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水の三日 芥川龍之介

 今日は、芥川龍之介の「水の三日」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは若いころの芥川龍之介の随筆で明治四十三年の罹災生活の三日間のことを記しています。
 芥川龍之介は効率最優先という世界からかけ離れたことを書くんです。なんでも手作業でやるよりほかない、芥川龍之介とその同級生たちは、罹災民のお手伝いをしていて、手紙の代筆をせっせとやっていっている。大水で生き残った人たちには怪我がなく、家は失われても取り乱さずに避難生活を送っている様子が描かれます。芥川龍之介の記す、避難所の細部の描写が印象に残りました。
   

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歴史の流れの中の図書館 中井正一

 今日は、中井正一の「歴史の流れの中の図書館」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 日本の集団の動き方の問題点について、第二次大戦時の軍事や科学研究を、日米で比較しながら、中井正一が考察しています。
 そこから図書館のしくみが3つある、という話に展開します。まずいちばん古い図書館は、博物館の蔵のように、保存することを中心とした図書館で、これは人々に公開されていない。本を秘宝のように扱っている奇妙な施設のことです。2つめは本を持ち寄ってバザールのように人が出入りして活発に本を貸し出す、生きた図書館について語っています。そして20世紀中盤の、3つめの新しい図書館というのが、インフォメーションセンターとしての図書館で、これはいわば今で言うとwikipediaみたいに情報を整頓し上手く情報を流通させる機能を持っている組織のことを言っているようです。前半に指摘していた、日本の集団が陥りがちな機能不全についての問題提議が、半世紀後に読んでもなんだかすごい指摘に思います。 このエッセーの後半に記されている平和な集団の存在感が、読んでいて印象に残りました。
  

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インド小景 菊池智子

 今日は、菊池智子の「インド小景」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは、インド文学の翻訳家である菊池智子さんから原稿をいただいた、現代随筆です。インドの暮らしや、コロナ問題を描きだしています。イチオシです。下記リンクから全文読めます。ご覧ください。

◎ 目次
 一 インドは多言語
 二 漂着
 三 やっぱりやさしいインド人
 四 警官
 五 和食とインド料理 
 六 トランプ禁止
 七 おじぎが変です
 八 そうかなあ
 九 善意の公害
 十 物売りの少年
 十一 ウィルスと疎外感
 十二 インドのコロナ禍
 十三 雀も少なくなりました
 

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明かりの本では、新作小説やエッセーや、古典の翻訳作品など、オリジナル原稿を募集しています。
くわしくはこちら。

人生案内 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「人生案内」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 坂口安吾は人生案内の名手だと思うんですけど、今回のはエッセーではなく小説です。新聞の人生案内の「熱狂的な愛読者となった」虎二郎という男を書くところからはなしが始まるんです。人生案内のページが好きすぎて、この投書に夢中になって、嘘の相談をいろいろやっているうちに、家業の蕎麦屋がおろそかになって立ちゆかなくなった。七転八倒があってじっさいに人生相談をしたくなるような苦境に至ったら、投書で解決できるようなもんでも無い。お竹の主人公への批判が、どうも筋が通っているように思える。
 なんだかトルストイの『人生論』における粉ひき男が水車と水源の謎に魅了されて山奥に消えるはなしがありますけれど、安吾の語る虎二郎のはなしは、これをみごとな落語にしたような魅力がありました。

 

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変った話 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「変った話」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 寺田寅彦は百年まえの出来事や思想を描くのですが、いま読んでも納得のゆく話に思います。今回は孔子の「中庸」や、老子の話、それから感染の話しが描かれているんです。ぼくは老子の本がすごく好きで、なんども読んでみたんですけど、寺田寅彦が今回、老子の話しをしていておもしろかったです。コロナ禍にも老子の哲学は重要なのでは、と思いました。
 ドイツのアレクサンダーウラール(1876–1919)が翻訳した老子にかんする本が、おもしろいらしいのです。ウラールは中国の近代文化を研究したジャーナリストなんです。この寺田が愛読した本はじつは、ハイデガーも読んでいて、そのことを語っている記録があります。
「無限に大きな四角には角がない。無限に大きい容器は何物をも包蔵しない。無限に大きい音は声がない。無限に大きな像には形態がない」
 という老子の思想を、寺田とハイデガーとウラールが読んでいた。
  

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