待つ者 豊島与志雄

 今日は、豊島与志雄の「待つ者」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 豊島与志雄は翻訳家として有名なのですが、随筆のみならず小説もいくつか書いています。
 今回の「待つ者」ではマグリットの絵画のように不思議な場面を描きだします。人の居る気配が濃厚な室内に、いつまで経っても人が来ない、という場面です。本文こうです。
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  ……明るい部分の中に、人生の日常の経路が中断された、その断面が浮んでくる。主人公を徒らに待ちわびている餉台や臥床は、人生の日常経路の中断面の相貌なのだ。そして暗い部分のなかに、他のさまざまなことが溺れこむ。よく知ってる人の名前を忘れたり、はっきり分ってる事柄が曖昧になったりする。quomark end - 待つ者 豊島与志雄
 
 哲学的なことを、豊島与志雄が述べてゆく。不思議なことを言うもんだと思っていたら、この空想の場面についての話しを聞いていた親友が、急に自分の故郷のことについて述べてゆくんです。この男は、古里の居るべきところから外れて、みずから出奔していた。
 絵画的で空虚な空想から、現実の男の事情が、あとづけで照射されて、物語創作が読者にもたらす効果というか、物語がどのように人間の心情に作用するのか、そのあたりのことをヴィクトルユゴーのレミゼラブルを翻訳した豊島与志雄が書いていて、そこに魅力を感じました。

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雨粒 石原純

 今日は、石原純の「雨粒」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは科学の随筆なんですけれども、霧箱というものが登場します。この随筆のもう少しのちの一九五〇年ごろには泡箱というのが米国で発明されて、これでノーベル賞を得るような新発見があった、というのを知りました。
 

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閑天地 石川啄木

 今日は、石川啄木の「閑天地」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この随筆集には「夏は来ぬ」というような美しい詩も記されています。おもに日々の雑感を閑天地にて書いています。啄木がラファエロ・サンティの絵画を眺めながら、イタリアやロンドンへの憧憬を書いているところが面白く感じました。世界史や古典思想とかもずいぶん壮大に描きだしていて、なんだか奇妙な随筆なんです。なぜ啄木がカーライルの思想に興味を持ったのか、調べてみると4歳年上の栗原古城がカーライルの本を熱心に翻訳していることがわかりました。啄木は、栗原との親交によって、海外のことを学んでいたようです。
 この随筆は言葉づかいがすてきで「雨声を友として語り」「我がなつかしき故山の読者よ」「稚き心の夢の瞳ひらきぬれば」……というように文体がいま読んでも美しいように思いました。「我が四畳半」という随筆集がこの本の中心を占めているのですけれども、貧しくてもゲーテや与謝野晶子やカーライルの本を読みつづけ、作曲家で思想家のリヒャルト・ワーグナー(ワグネル)の研究を続けた、近代の文学者のあふれる思いを垣間見たように思いました。ところで啄木は意外と勉強ができなかったらしく、カンニングをして落第したことがあるんです、そう思ってこの難文の随筆を読むとなんだか楽しかったです。

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初旅 寺田寅彦

 今日は、寺田寅彦の「初旅」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 子供のころのはじめての旅で、寺田寅彦は、鯨の漁を見に行ってみた……それで、とある絵巻物を見せてもらったという、ずいぶんダイナミックな随筆でした。絵巻物といえばそういえば、広島の宮島の神社に、絵巻物を鑑賞できる場所があったのを思いだしました。(いまやっているのかどうか知らないのですが)
 

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犬 島崎藤村

 今日は、島崎藤村の「犬」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 島崎藤村といえば、社会的な問題を描きだした「破戒」の作者で、偉大な文学者だと思うのです。さいしょの作品として「若菜集」という瑞々しく耽美的な詩集も書いていてとにかくかっこいいし、さまざまな魅力を持つ作家なんですけど、この随筆的作品を読むと、ナルキッソスのかいまみた犬と男女の世界のようで、なんだかおもしろかったです。本文こうです。
quomark03 - 犬 島崎藤村
 私には人に愛せらるゝ性質があつた、人の心を引くに足るだけの容貌もあつた。自分で言ふもなものではあるが、私はよく手入れをした髪と、たかい筋の通つた鼻と、浅黒くはあるがしかしきめこまか光沢つやのある皮膚とを持つて居た。のみならず、いかにせば斯の容貌を用ふべきかといふことをも知つて居た。私には又、若々しさがあつた。力があつた。quomark end - 犬 島崎藤村
 

0000 - 犬 島崎藤村

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晶子詩篇全集拾遺(58)

 今日は、与謝野晶子の「晶子詩篇全集拾遺」その(58)を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回の詩に描かれた男を、漫画家が描いたら、すこぶる個性的なキャラクターになるのではと思いました。マグリットの絵にあるような、不思議な気配のただよう詩でした。

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★はじめから最後まで全文を通読する(大容量で重いです)