今日は、宮沢賢治の「ポラーノの広場」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
この小説の主人公はレオーノ・キューストという男なのですが、ところどころ、宮沢賢治のそのまんまの性格が記されています。
俸給もほんのわずかでしたが、受持ちが標本の採集や整理で生れ付き好きなことでしたから、わたくしは毎日ずいぶん愉快にはたらきました。
というのは現実の賢治もまったくこの通りに生きていたように思います。
あのイーハトーヴォのすきとおった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい森で飾られたモリーオ市、郊外のぎらぎらひかる草の波。
という記載は「春と修羅」の詩で出てきそうな雰囲気です。賢治は農学校の先生で、レオーノ・キューストは市役所の不思議な役人です。はじめ、どこかに行ってしまった山羊を探し歩いていてようやくこの迷子の山羊を見つけたあとすぐ「ポラーノの広場」という謎の場所について語られはじめます。行き方が謎で、そう簡単には見つからない場所にある広場なんです。それからみんなでこのポラーノの広場を探しにゆきます。
ここからはネタバレなので未読の方は本文から先に読んだほうが良いと思うんですが……旅の途中で現れる、番号が一つ一つ記された花というのが、謎めいていて、すてきでした。
美しい音色が聞こえてくると、ポラーノの広場はもうすぐなんです。この広場では楽隊もいて夏まつりをやっているんです。ゲーテの『ファウスト』に描かれた乱痴気騒ぎや、ハリウッド映画に出てくる拳闘シーンみたいなものもあって、どうも明るい場面もあります。それから夏の祭りに疲れて、レオーノ・キューストとファゼーロ少年は家に帰ります。
そのあと奇妙な事件が起きるんです。ファゼーロがどこかに消えてしまったんです。これが……これはもう完全にネタバレなんですけど、いっけん失踪に見えて、出奔というか、じつはりっぱな出立だったという事態が後半で明らかになります。子どもにまで乱闘をしかけたデストゥパーゴは事業に失敗して信用を失うのでした。デストゥパーゴが保てなかったポラーノの広場を、自分たちではじめから作り直そうとする、終盤のこの文章の前後の記載が、とても印象に残りました。
「そうだ(略)そこへ夜行って歌えば、またそこで風を吸えば、もう元気がついてあしたの仕事中からだいっぱい勢がよくて面白いような、そういうポラーノの広場をぼくらはみんなでこさえよう。」
最後のほうで(原稿約一枚分空白)となっているのですが、いちぶ失われていても、みごとな完成度であるのに驚きました。
装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約3秒)
明けましておめでとうございます。今年も近代の詩や小説を中心に再読をしてみて、また新たに未読の本を見つけてゆきたいと思います。
追記
いま現在、更新を数日間ほど休止しています。明かりの本ではこれまで数回ほど「文学壁紙」を配信してきました。宮沢賢治「春と修羅」のPC&タブレット用の文学壁紙をちょっと作りました。ダウンロード無料です。ご自由に個人利用してください。
追記2 空き時間に「海野十三敗戦日記」の装画を作り直しました。
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- もりのおひめさま ジビュレ・フォン・オルファース
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- 地球を狙う者 海野十三
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- 牛女 小川未明
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- 煙突と柳 小川未明
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