空気男 海野十三

 今日は、海野十三の「空気男」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはスラップスティックコメディーみたいな空想科学小説なんです。ピカソのキュビズム絵画の右上部分みたいな、オチの無い描きっぱなしの展開があって、これを海野十三は、別名義で書いているんです。投げやりな感じがかえって文体を個性的にしているように思いました。
 

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一過程 島木健作

 今日は、島木健作の「一過程」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは近代の、貧しい農民たちが選挙と地域政治に取り組む物語です。落選後の活動、というふつう見ることの出来ない場面から描かれてゆくのが印象深かったです。
 少数派は多数決で勝てない、けれども少数派は正しい政治によって不平等な条件を撤廃に持ちこむ必要がある、という不合理があると思うんです。そこで近代文学者の島木健作はどういうことを書いたのか、というのが興味深かったです。マイノリティーと政治の物語というと、ぼくはジョン・ルイスの『MARCH』という作品が好きで、これは十代向けのCOMICの形式で描かれた書物なんですけれども、二十世紀の黒人は具体的にどのような迫害を受けていてどのように政治運動を成功させたのか、史実の負の側面をどう描いて伝えてゆくのか、その表現方法に関心を持ちました。美談に終わらせないんですけど、マルコムXとキング牧師の晩期を慎重に割愛する、という表現もあって、一巻の終盤が見事だったのと、中盤で描かれてゆくオバマ大統領との描写と、最終巻の物語の帰結の持って行き方に感心しました。
 島木健作は、挫折を描きだすんです。現実的な描写に驚く物語なんです。社会運動の物語と言うよりもジョージオーウェルのディストピア小説「1984」に近いところがありました。「一過程」は1935年に書かれたもので、現実にも当時の作家はつねに発禁と隣りあわせで、当時の特高からの迫害をまぬかれて戦争の終わる日を迎えることはとても困難な十年間だったように思いました。この小説は後半で意外な展開があるんです。それから終盤の描写がみごとでした……。
 

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緑衣の女 松本泰

 今日は、松本泰の「緑衣の女」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは推理小説というか探偵小説で、イギリスに長らく滞在していて一文無しになった主人公泉原いずみはらと探偵のギルが、数年前に泉原の恋人だったグヰンの謎を追う物語なんです。(グヰンは、グインまたはグウィンと読みます)
 泉原は、はじめから一貫して、グィンのことをずっと考えていて、そこに物語としての魅力を感じました。
 

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緑の芽 佐左木俊郎

 今日は、佐左木俊郎の「緑の芽」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 農民文学というとまず、宮沢賢治の「農民芸術概論綱要」が思いうかぶんですけど、近代文学の中では、佐左木俊郎がまたそれらとは異なる、農民の生き方を直接的に描きだす小説を数多く描いているんです。じっさい農民の生きざまを直接的に描いた作家と言えば、佐左木俊郎がいちばん有名なんだと思います。
 農民、と言っても現代の機械を上手く使いこなす大規模農園とはまるで違っていて、ぜんぶ手作業で仕事をするしかない、機械を持たない時代の農業の物語で……つまり千年間以上、過去に何億人という日本人が(世界中の人が)こうやってほんとうに生きてきたわけで、読んでいてつねに「うわあ」と声をあげてその過酷な生き方を垣間見てゆきました。数百年前とかだったら機械が無かったわけで、テレビも無ければ、巨大輪転機も輸送トラックも無いから紙の本もふつうの人は手に取れないし、図書館も本屋も無い。ものを教えてくれるのは親族か同朋だけで、過酷な労働しか存在しない。読み終えて途方に暮れました……。父親の人徳が無かったら、こういう百年前の家の未来はいったいどうなるんだろうかとか、思いました。
 

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プウルの傍で 中島敦

 今日は、中島敦の「プウルの傍で」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 植民地時代の少年たちの物語が描きだされています。自分で自分の学校の成績を意図的に下げて、禁じられた遊びに夢中になるあたりの描写がおもしろかったです。
 ふつうそういうときに、攻撃的な傾向を帯びがちなんだと思うんですが、道を外れるほど詩的になるのが、さすが中島敦だと思いました……。暴虐の代わりに音楽をやるとか、暴動ではなくサップを楽しむという文化がかっこ良いと思うんですけど、中島敦はそこに詩を置いているのだと思いました。
 

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向日葵の眼 野村胡堂

 今日は、野村胡堂の「向日葵の眼」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは行方不明になった麗子の母親を探す、少年少女向けの冒険小説なんです。九十年くらい前に書かれた娯楽小説なんです。なんだが古い映画のあらすじだけを記していったみたいな小説で、オチもちょっとあっさりしていて、不思議な読後感の小説でした。『銭形平次捕物控』の作者が描いた児童小説で、起承転結が捕物帖の仕組みで展開してます。
 

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