真夏日の散歩 原民喜

 今日は、原民喜の「真夏日の散歩」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 「八月の熱と光が街を包んでゐる」という一文が印象に残る、原民喜の短編を読んでみました。
 原民喜は平穏な作品も含めて、どれを読んでも唸ってしまう、すごい作家だと思うんですが、今回のは掌編というのか超短編です。
「八月の熱と光が街を包んで到る処の空間が軽い脳貧血を呈して」いる。「彼は見えない一つの糸に牽かれて、死にかかった身体を無理にひきずって歩いてゐた。」と書かれています。おそらく1946年かそののちに書かれた短編だと思います。

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★ 原民喜の代表作「夏の花」を読む。
 
追記  「顔が仮面のやうになってしまって、毀れものを運ぶやうにおづおづと身体を動かして」いる男のことを描きだした文学作品です。酷い苦の中にあっても、平穏無事に煙草を吸っていたころの記憶をたどって男は煙草を一本、吸ってみたいと思い、友人の「私」に煙草をもらいます。彼は「たった一本の煙草をさも重たげに指に挟むと、非常な努力を以て、それを吸はうとするのだった」と記されて、ありました。なぜこの小説は、あまりにも短くなってしまったのか、分からないので調べてみたのですが、執筆時期も発表年も分からず仕舞いでした。
 
原民喜の本をはじめて読む場合は「広島文学資料室」の原民喜の頁をまずご覧になることをお勧めします。

働く町 夢野久作

 今日は、夢野久作の「働く町」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 夢野久作の代表作は極端に異質で怖ろしい作品なんですが、今回のは短い童話です。あるすてきな町に、一流のお医者さんが訪れる、という話しなのですが……。
 

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追記  医者が荒れ地に水路を造って、ほんとうに医を実現した、という別の時代の作品のことを思いだしました。

市井喧争 太宰治

 今日は、太宰治の「市井喧争」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは太宰治の、日々の暮らしの中で起きたちょっとした諍いのことを書いていて、押し売りに薔薇を買わされたけれども、あまりにも高すぎる値段で「私自身の卑屈な弱さから、断り切れず四円まきあげられ、あとでたいへん不愉快な思いをした」ということの顛末を描きだした小説です。太宰治は事実っぽく架空の話を書くことが多いので、どこまで事実の描写なのか分からないのですが、作中の「嘘」と「偽物」という言葉の置き方がなんだか美しいというのか、妙に印象に残る掌編小説でした。農民ではないのに農民という嘘を言った、と太宰治は考えつつ、近くに住む農家の女性だったら、ちょっと高くても薔薇を買ってあげたいと思った、ようなんです。
 

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追記  作中に記された「贋百姓の有様を小説に書いて」というのは翌年の1940年に発表された『善蔵を思う』という別の短編小説にて描かれています。
 

石窟 田山録弥

 今日は、田山録弥の「石窟」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 田山録弥というのは田山花袋のことで、これはほんの数ページの小説です。画家と作家の2人が登山をしています。山奥のほら穴のなかに、無数の仏像が隠されていたのを偶然にも発見する場面が描かれます。
 

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追記  山奥の巨大な岩をくり抜いて洞穴を作り、そこに大量の仏像を彫った人間の仕事をまのあたりにして衝撃を受ける、画家と作家なのでした。千年以上前につくられた彫像の群に圧倒されるのでした。2人はこの千数百年前の無名の仏師の、たいへんな仕事に震えあがり思わず落涙します。帰路につきながらも、呆然とし続けたのでした。 
  

草の中 横光利一

 今日は、横光利一の「草の中」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 横光利一の純文学を読んでみました。原稿用紙換算でほんの8頁の掌編ですが、3つの不在について記された静謐な文学作品でした。
 僧侶がおらず、誰も住んでいない寺を借りた男の物語で、幼い病者と孤独なKのことが記されてゆきます。杜甫の『春望』を想起させる短編でした。
 

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若返り薬 夢野久作

 今日は、夢野久作の「若返り薬」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回の童話は、夢野久作の独特さがよく現れている作品で、幼子向けの作品なのでちょっと荒唐無稽な場面もあるのですが、勧善懲悪が過剰になって世界が捲りかえるさまが描きだされ、悪夢の変転する様相がみごとな短編でした。こんな怪作をつくるのは夢野久作だけなのでは、と思う暗黒の童話でした。
 

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追記  恐怖を好んで描いた夢野久作は、なぜだか、童話を好んで描いたんです。読んでみるとたいてい、親と子というのがクローズアップされています。童話も、大人が幼子に読み聞かせるもので、この親子間の謎めいた関係性に、夢野久作は圧倒的なこだわりがあるようなのです。そういえば日本三大奇書の「ドグラ・マグラ」も父親によって病棟に閉じ込められた男と、それから胎児が中心的に描かれていました。