奇怪な客 正宗白鳥

 今日は、正宗白鳥の「奇怪な客」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 顔も見せないし、名前も名乗らない奇怪な客がある宿屋にやって来て、いちばん良い部屋に泊まってしまった。
 ほとんど新品のチョッキや服を屑籠に放り込んだり、なんとも解せないことをする、客なのでした。
 

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追記  一週間も泊まり込んで、金払いだけは良いのだが、宿主としては、あまりにも不気味なのでそろそろおいとましてほしいので「泊める、泊めない」という押し問答になってしまう。
 事情を聴くと、煩わされずに顔を隠して泊まりたいのだという。しかも男かと思ったら、お金持ちのご婦人だった。なにか家の事情があって、一人でホテルに長居しているらしい。物語の起承転結は無い、そのまま終わる話なんですが、奇怪な客とはまた異なる、いくつかの異様な事情が明記されてゆくのが興味深い小説でした。

 

餅 岡本かの子

 今日は、岡本かの子の「餅」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 妻と夫の2人で、婚約したころの出来事をお正月に語りあう掌編小説でした。
 料理の技巧が稚拙だったところにかえって魅力を感じた、というのが話しの中心にありました。
 

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追記 とくになにも起きない静かな作品なんですが、懸詞のように言葉が積み重ねられていて韻律が整っているというのか、知的な文体の小説に思いました。
 

雪の夜の話 太宰治

 今日は、太宰治の「雪の夜の話」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 「スルメを落してがっかりするなんて、下品な事で恥ずかしいのですが、でも、私はそれをおねえさんにあげようと思っていたの。」というところから始まる短編小説です。お土産の食べ物を落としてしまった代わりに、雪景色の美しさをおねえさんへのお土産にしようと思いつく幼子の話なんです。
 戦中戦後すぐの近代小説の中で、この作品はとくに当時の貧しさを念入りに描きだした小説に思いました。
 美しい心もちと、尾籠びろうな話しとが2重に積み重ねつづけられる、奇妙な展開の物語でした。
 

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握った手 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「握った手」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 おおよそ百年前のこの短編の恋愛小説を読んでいて、これは現実にはあり得るんだろうかと思って、もしかすると百年前の映画館は今よりもっと幻想的な空間だったのでは、というように思いました。
 安吾は本作での出会いの内容を「出会いは甚だしく俗悪で詩趣に欠けている」と書きつつ、映画館で思わず見知らぬ娘の手を握ってしまいそこから話しはじめて交際に至ったという、妙なことがらから始まる二人の会話劇が展開します。お互いに一目惚れして、警察に通報もされずにすんなりと交流が始まるんですが「松夫はちかごろ考えすぎるようで」、彼女はどんな男とでもすぐに仲良くなってしまうのではという邪推が生じてしまうのでした。
 さらに松夫は新しい女性を見つけてこれもまた無理やりに口説こうとしてしまう。松夫の性急な態度と発言に呆れかえった水木由子は「強引すぎ」て「悪」い人間にしか見えないということを告げて去ってゆくでした。そのあと松夫は……。
  

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 松夫は「就職もダメだし、試験もダメ」で「革命」的な「アイビキ」もまるで成功せず「たった一日の革命以来、急速度に没落してしまった」のでした。中盤をすぎてから、実際問題どうやって就職をしようかという悩みを二人で話しあいはじめるあたりから、身におぼえのある人生の一節だったのでのめり込んで読めました。後半から安吾の人間賛歌というのか、人を鼓舞する記載があり、その文章に魅入られました。
 

二人の男と荷車曳き 夢野久作

 今日は、夢野久作の「二人の男と荷車曳き」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 夢野久作といえばとにかく無茶苦茶なことをどこまでも書ききるという作家だと思っていたんです。こんかいの短編では、ほとんど異変らしい異変は起きない、すぐに終わる掌編なのですが、氏の「ドグラマグラ」や「少女地獄」がなぜ書かれたのか、その謎の解明になりそうな二つの事柄が記されているように思いました。力自慢の男二人が決闘をするときに、なぜかはじめに銃撃戦になって、能力がまったく互角であるために、弾丸がどれも中空でぶつかり合ってしまって無効化されるという、近代小説にしては珍しいメタ的な展開があるというのと、中盤後半でトリックスターの役割として出てくる「荷車曳き」が、力自慢の二人を操って——彼が自分の意図をさいごに明かします。「ててお出でになる無駄な力を拾っただけです」という……これがじつは「ドグラマグラ」の執筆を可能とした、動機の一部でもあったのではと、いうように空想しました。
 

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好奇心 織田作之助

 今日は、織田作之助の「好奇心」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは新聞の片隅に載せられた掌編小説です。最初の数行はたどたどしい文体で、これは主人公の女性の急いた心情を書きあらわしているのかと思うんですが、事件の被害にあった知り合いを腐すことからはじまって、事件への好奇心を語る構成でした。
 最後はちょっと納得のゆく展開になるんですが、終わりの1行で、なんだか腑に落ちました。
  

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