女 水野仙子

 今日は、水野仙子の「女」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
  女性の作家が、自作の題名を「女」とするのはなんだか妙だなと思いながら読みはじめたら、これが想定外にハードボイルドな小説で面白かったです。拷問と探偵と謎解き、というのが展開します。安吾や武田麟太郎が書きそうな日本近代の家並みと、犯罪の謎解きが入り混じる、不思議な小説でした。
 

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追記  オチは何とも妙なものでした。これは……現代作品ではこういう結末を書かないのでは、と思いました。 
  
(ひとりつぶやき  数日間ほど離席していました。更新が微量にとどこおっております)

お守り 山川方夫

 今日は、山川方夫の「お守り」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはサスペンスものの短編小説で、倒置法の技法と似ている書きかたで、時間軸が前後しながら、犯行寸前の男の心境が語られてゆく、緊張感のある小説でした。
 ドッペルゲンガーの物語が流行する時代というのがあるように思うんです。集合住宅が盛んになる時代とか、インターネットが未整備の時代とか……。戦前の近代小説にもこれの流行する時代というのがあったのでは、と思いました。これは戦後の作品だからなのか、哲学的な問題の描かれた、すてきな小説でした。
 

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追記   終盤では、悪の劣化コピーにならないためにはどうしたらいいのか……という問題が生じています。ちがうものなのに似たようなものだと……誤認させてくるのが振り込め詐欺師や不審者の行うことがらで、似ているようでじつはかなりの違いがあることを分からせるのが平和で文化的なものごとなのでは、とか思いました。
   部屋を間違えて入ってきてしまった隣家の男……というのはそういえば十年くらい前にぼくも経験したことがあって、優れた小説の場合、絶対にあり得ないような異変が、じつは現実にあり得そうな事態に収斂しゅうれんしてゆくことがあるなあ、と思いました。

奎吉 梶井基次郎

 今日は、梶井基次郎の「奎吉」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 梶井基次郎といえば「檸檬」がおすすめなんです。今回の短編「奎吉」では、なんだか厳しい状況が描かれます。今回の主人公の奎吉は、学校の勉強をサボってしまって、金も環境もずいぶんとぼしくなってしまった。金が無いので、無心をしつづけてしまって、さらに貧しくなってしまう。アブク銭とか悪貨とかいう言葉がありますけど、奎吉の手にしているお金はどうもそういうものになってしまう。
 真面目に働いてその対価が安定して入ってくる、というのとちがう金の流れで、お金に右往左往してしまう……。人ごとでは無い話だなあーと思いました。
 お金のもらいかたがどうも誠実ではなくても、使いかたのほうを改善することは出来るのでは、と思いました。
 

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妻 横光利一

 今日は、横光利一の「妻」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 夫婦のなんだか朗らかな暮らしのなかで「私」は庭のカマキリの生態を観察していると、メスのカマキリが夫を食べてしまって、養分になってしまう。終盤の「私」の指摘を上品に読み説いた場合、どういった言いかえになるんだろうかと思いました。妻子を養えたら誰だって喜ぶ……。末尾のとくに意味を持たない、おだやかな会話の四行が、映画の結末でこれを目の当たりにしたら、なにか満足度が高いのではと思いました。
  

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玩具 太宰治

 今日は、宰治の「玩具」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 太宰治が近代文学の中でもっとも美しい文を書くんだと思っているんですけど、この一文が印象に残りました。
quomark03 - 玩具 太宰治
 私は糸の切れた紙凧かみだこのようにふわふわ生家へ吹きもどされる。quomark end - 玩具 太宰治
 
 糸の切れた紙凧はふつう、青空か平原に落ちてゆくもんだと思うんですが、そのような自然な場に生家があるようです……。この後段を読んでゆくと、このたとえに複数の意味あいが込められているのを感じて、こういう隠喩の技法はどうやって書けるんだろうと、思いました。いっけん平易な文の連なりに見えるんですが、よくみるとマグリットのデペイズマンのような方法を用いているところがあるように思います。これは未完の自伝的小説なのですが、終盤の描写に迫力がありました。
 

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 追記 
 作中の「手管」のあとに2回だけ書かれる「君」というのも妙なんです……。こんかい「ですます調」ではなく「だ・である調」で「る」で閉じる文章が多くて118回くらい「る」が使われているんですけど「だ」はほとんど使っていない。「ものの名前というものは、それがふさわしい名前であるなら、よし聞かずとも、ひとりでに判って来るものだ。」このあたりまで「だ」を使ってないんです。終盤「私が二つのときの冬」のあたりでも使っています。太宰治の独特な文体がみごとで、その美しさの理由がなんなのかくわしく論じている本があれば、ちょっと読んでみたいと思いました。
むつかしい言葉を調べてみました。
手管 
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%89%8B%E7%AE%A1/

科学者と夜店商人 海野十三

 今日は、海野十三の「科学者と夜店商人」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ちょっと間の抜けた科学者の、奇妙な謎解きの物語でした。 
     

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追記  こんかい、海野十三が記している謎は、生きものを使ったトリックなんです。文明が進歩して自然界が遠のいた時代には、自然科学こそが重大な学問になってゆくと思うんですが、こんかい登場する科学者は、自然科学に疎いんです。それで科学者はだまされてしまいます。古典落語みたいな近代SFでした。