あとの祭り 山之口貘

 今日は、山之口貘の「あとの祭り」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 井戸端会議というと、会社でも学校でもよく生じることだと思うんですが、これは本物の井戸端での近所づきあいからはじまる、自分の生活を描きだした私小説です。狭い家の中で女房子どもが暮らしている中ではなかなか原稿が書けず、子どもたちを寝かしつけてからやっと夜に創作の仕事を始められる。ヘトヘトになって眠ると、ある日「ぼく」は突然、起こされてしまう。どうも泥棒が入ったようなんです。どうも深夜にどしん、という音が聞こえた。また夫がうなされて足をばたつかせたのかと思ったら、それがどうも泥棒の足音だったようです……。
 

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追記  漱石の「門」を想起させる話しでした。漱石は奇妙な泥棒の挿話を書いたんですが、じつはじっさいに漱石は明治38年の春ごろに、ほんとに泥棒に入られて服をいろいろ盗まれたことがあったんだそうです。

かすかな声 太宰治

 今日は、太宰治の「かすかな声」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは物語をあまたに描いた太宰治にしてはめずらしく、話のスジがほとんどない、散文詩のような短編でした。乱雑に並べた名言集のような、展開がなく、オチのない作品なんですが、このような掌編であってもやはり太宰治の独特な個性が表れているのが不思議に思いました。

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面会 織田作之助

 今日は、織田作之助の「面会」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは……1940年の夏に発表された作品で、召集された友人のことを書いている、戦争ものの掌編でした。1945年の敗戦間近の新聞雑誌の半分以上は、戦争の記載に費やされていたように思います。
 織田作之助は1941年に「青春の逆説」で発禁処分を受けているのですが、風俗壊乱という理由で発禁になったそうです。 「面会」は、漱石が「草枕」の終盤で描いた、出征する男を連想させる短編でした。
 

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女 水野仙子

 今日は、水野仙子の「女」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
  女性の作家が、自作の題名を「女」とするのはなんだか妙だなと思いながら読みはじめたら、これが想定外にハードボイルドな小説で面白かったです。拷問と探偵と謎解き、というのが展開します。安吾や武田麟太郎が書きそうな日本近代の家並みと、犯罪の謎解きが入り混じる、不思議な小説でした。
 

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追記  オチは何とも妙なものでした。これは……現代作品ではこういう結末を書かないのでは、と思いました。 
  
(ひとりつぶやき  数日間ほど離席していました。更新が微量にとどこおっております)

お守り 山川方夫

 今日は、山川方夫の「お守り」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはサスペンスものの短編小説で、倒置法の技法と似ている書きかたで、時間軸が前後しながら、犯行寸前の男の心境が語られてゆく、緊張感のある小説でした。
 ドッペルゲンガーの物語が流行する時代というのがあるように思うんです。集合住宅が盛んになる時代とか、インターネットが未整備の時代とか……。戦前の近代小説にもこれの流行する時代というのがあったのでは、と思いました。これは戦後の作品だからなのか、哲学的な問題の描かれた、すてきな小説でした。
 

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追記   終盤では、悪の劣化コピーにならないためにはどうしたらいいのか……という問題が生じています。ちがうものなのに似たようなものだと……誤認させてくるのが振り込め詐欺師や不審者の行うことがらで、似ているようでじつはかなりの違いがあることを分からせるのが平和で文化的なものごとなのでは、とか思いました。
   部屋を間違えて入ってきてしまった隣家の男……というのはそういえば十年くらい前にぼくも経験したことがあって、優れた小説の場合、絶対にあり得ないような異変が、じつは現実にあり得そうな事態に収斂しゅうれんしてゆくことがあるなあ、と思いました。

奎吉 梶井基次郎

 今日は、梶井基次郎の「奎吉」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 梶井基次郎といえば「檸檬」がおすすめなんです。今回の短編「奎吉」では、なんだか厳しい状況が描かれます。今回の主人公の奎吉は、学校の勉強をサボってしまって、金も環境もずいぶんとぼしくなってしまった。金が無いので、無心をしつづけてしまって、さらに貧しくなってしまう。アブク銭とか悪貨とかいう言葉がありますけど、奎吉の手にしているお金はどうもそういうものになってしまう。
 真面目に働いてその対価が安定して入ってくる、というのとちがう金の流れで、お金に右往左往してしまう……。人ごとでは無い話だなあーと思いました。
 お金のもらいかたがどうも誠実ではなくても、使いかたのほうを改善することは出来るのでは、と思いました。
 

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