撞球室の七人 橋本五郎

 今日は、橋本五郎の「撞球室の七人」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ビリヤード中に奇妙な事件が起きる。多くの客が近くで見ていたのにもかかわらず、いったいどういう事件だったのかが、わからない。凶器もおおよそは判定できているのに、いったいだれが犯人なのかが分からない。読んでいて、事件なのではなく事故なのかもしれない……と予想しつつ、この事件の被害者の動きを自分なりに検証してみて読みすすめたんですが、どうもやはり犯人がいるようで、ここからは完全にネタバレなので、未読の方は読み飛ばしてください。
 曲芸師の男が、どうもナイフ投げの技で犯行を行ったようである。ところが、凶器が見つからない。そこで気がついたのに、現場にいた「ゲーム取り」の少女が、なにかを真剣に思いつめていて、みなが事件に目を奪われている時に一人だけ不思議な動きをしていたことに、「私」は気がついた……。だが「私」は彼女を見逃したのでした。「子供らしいおびえた様で警官の様子ばかりを眺めていた」彼女の未来のことを思うと、真相は暴かずにおく、という判断をした様子でした……。

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乗合自動車 川田功

 今日は、川田功の「乗合自動車」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは掏摸と刑事のはなしです。掏摸のものの考えがなんだか下品というか生々しく、その犯罪心理に興味を引かれました。ライバルの掏摸のことを思いだしつつ、刑事が見張っているところで悪事をなそうと夢中になる、罪のなすりつけをする……。どうもこう、最近思うことは、近代文学にはよく勧善懲悪か、その逆を行くユーモアというのが描かれています。文学においてはこれが重大な魅力になっていると思いました。
 

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朝のヨット 山川方夫

 今日は、山川方夫の「朝のヨット」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 居なくなった少年をめぐる掌編小説です。奇妙に洒脱な文体が印象に残りました。
 むつかしい言葉を調べてみました。
 舫綱
 

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小犬 鈴木三重吉

 今日は、鈴木三重吉の「小犬」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この童話の主人公であるおばあさんは、泥棒に入られたあとに、番犬として犬を飼いたいと思っていたんです。ところが犬を飼うのにはたくさんのお金が必要で、困ってしまって、犬を捨てることにしてしまった。童話に対して、現代法律と照らし合わせてツッコミを入れるというのはとにかく非文学的だと思うんですけど、今の時代は、ペットを捨てたり害を与えたりするのは違法なんです。おばあさんは、小犬を無碍に捨てるのは忍びなく、奇妙なことになってゆく……。作中に登場する「犬の捨て場」という表記を読んで、現代ではこの問題はいったいどのようになっているのか調べてみると、ほんの10年前と今とで、ずいぶん状況は変わっていると知りました。2010年と2020年で比較してみて、動物愛護管理法による殺処分もかなり減って十分の一以下になっているようです。犬と人間との関係性もほんの短い期間で、ずいぶん変化している。
 いまと百年前とでは法律も違うし、体格も違うし、どうも犬の生き方もぜんぜんちがう。ぼくは古くさい性格の犬をずいぶん昔に飼っていたんですけど、飼い主に対して咆えつづけて突撃してきて怪我寸前の悪さをするとか、お腹が空いたらもうとんでもなく騒ぐとか、散歩をしていてもぜったいに並んで歩こうとしないで綱引き合戦をえんえんやっているとか、大事なマンガをグチャグチャにかみ散らかして嬉しそうにシッポをふっているとか、強そうな植木職人にはしっぽを巻いて逃げるとか、番犬とか愛玩という言葉とは、まったく関係ない犬の人生を歩んでいたのを、思いだしました。
   

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牛を調弄ふ男 原民喜

 今日は、原民喜の「牛を調弄ふ男」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 原民喜というと「夏の花」がもっとも有名な作品だとおもうのですが、今回の「牛を調弄ふ男」というのはなんだか妙な掌編小説で、若い女の子をからかったかと思ったら、こんどは大きな牛をからかおうとする。読み終えてから……いったいいつ書いた作品だろうと、ちょっと調べてみると、1935年の小品集『焔』に収録されていたものだとわかりました。1939年から原民喜の文学はその質が変化しています。詳しくはwikipediaを読んでみてください。この短編は、だれも注目していない作品なんですけれども、読んでみると、原民喜の危機への意識が垣間見られる、のちに原爆小景を発表しガリバー旅行記の翻訳をする、偉大な作家の、若書きのころのちょっとした小品だ、という感じがします。不思議な短編です。
 

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女王スカァアの笑い フィオナ・マクラウド

 今日は、フィオナ・マクラウドの「女王スカァアの笑い」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ウィリアム・シャープが暗い女王を描きだしているのですが、そこはかとなく美しい、アイルランド神話の世界でした。
 「影の者」という意味を持つスカァアという名の女王と、ケルトの英雄であるクーフーリンの物語です。
 クーフーリンは少年時代から、美の神のごとく美しかった。フィオナ・マクラウドはこう記します。
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  クウフリンの身辺には光があった、ちょうど日の入り方一時間前ぐらいの山々の夕ばえのような光であった。quomark end - 女王スカァアの笑い フィオナ・マクラウド
 
 女たちが勇ましく剣と槍で武装し海賊たちを討ち滅ぼしている。残酷な女王は、クーフーリンがただ己の使命のために、スカァアの国を去って旅だったことを、さみしく思うのです。愛おしい男であるがゆえに彼は自分の道を歩んで去ってゆく。その離別の悲しみのほうが、なににもまして女王の心を捉えている。「すべての上に深い平和が来た」という一文と、その前後の描写が美しかったです。
  

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