鉛筆のしん 中谷宇吉郎

 今日は、中谷宇吉郎の「鉛筆のしん」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 本屋で発見できなかったけれども、青空文庫を読むようになってから発見した書き手の中で、ぼくはいちばん好きなのは中谷宇吉郎で、この人の随筆はどれを読んでも面白いんです。イギリスやアメリカで物理学の研究をした科学者で、日本人の文化について深く踏み込んだことを、学生にも理解できるように分かりやすく書いているので、読んでいてすんなり入ってくるように思います。
 こんかいは戦争が終わってすぐのところで奇妙な考えかたにおちいっていた青年のことが記されているんですけど、本物の学者や文学者と比較したら、ぼくはどこまで行ってもたぶんこの、トンチンカンなことを考える青年に近いままなんだろうなと思うんですけど、それに対して、どういうように考えてみたら良いか、どういうように教えることにしたら良いかを論考しているのが、今回の随筆です。丁寧な暮らしと作法を重んじる、禅のような考えだなあ、と思いました。
 

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人生における離合について 倉田百三

 今日は、倉田百三の「人生における離合について」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 江戸時代に主流であった近松の創作物があって、そのあとに近代小説があるわけで、こんかい倉田百三が、日本の愛別離苦について書いています。
 万葉集の大津皇子における離別の記載が興味深く、チェーホフの文学性や、レテ川のことについても記していました。
 江戸の情緒的な戯作から、近代の理知的な創作への変化のぶぶんを論考しています。
 この随筆は、人生訓のような箇所もあって離別や苦があっても『自然に率直に朗らかに「求めよさらば与えられん」という態度で立ち向かうことをすすめたい』と言うようなことも記しています。階級社会や家系社会が減退して、自由恋愛が一般的になっていった時代の、随筆に思いました。
 もう当時とは、かんぜんに変わってしまっているので、ちょっと逆立ちして世界をのぞき込んでいるような、奇妙な部分もあるんですけど、現代人の言わないことを書いているのでなんだか引き込まれるエッセーでした。戦争が終わる三年前の不穏な時代に、婦人公論に発表された随筆なのでした。終盤の「祈り」と鎮魂の文が印象に残りました。
  

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単純な質問 中谷宇吉郎

 今日は、中谷宇吉郎の「単純な質問」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは戦争が終わってずいぶん落ちついたあとに描かれています。三十年ほどもずっと米国に在住していった日本生まれの男性が見た、日米の暮らしぶりのちがいについての、こまごまとした疑問について、科学者の中谷宇吉郎が考えているエッセーです。働き者に見える日本人のほうが20世紀中盤ではゆったり行楽して温泉で休む人が多かった、らしいです。日本は休暇が少ないのが伝統だと思っていたんですけど、1955年はもっとのどかだったようです。非計画というのがじつは近未来のことを無視していて不味いんじゃないかという指摘があるんですけど、ここから日本の公害がいちばん悪化してゆくうえ過労が増えてゆくので、中谷宇吉郎の指摘は鋭いように思いました。
  

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道 水野仙子

 今日は、水野仙子の「道」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 涼しい晩夏について記すところから「私」の小説がはじまります。まだ九月なのに寒い風が吹く。
 季節の微妙な変化と風景と心情の細やかな描写が美しいように思いました。
 水野仙子は、苦について淡々と記すんですが、病と愛を結びつけて描くところがほかにない独特な魅力を生じさせているように思いました。夫婦二人の間に現れるAという画家の男が、「私」の夫婦生活とはべつのまなざしを投じているところがなんだか精妙な展開に思います。
 最後の第二十章だけを、まったく別のものに書き直すとしたら、いったいどういう章が新しく描かれるんだろうと思いました。終盤の「ほんたうの道」という言葉が印象に残りました。
 

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食器は料理のきもの 北大路魯山人

 今日は、北大路魯山人の「食器は料理のきもの」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 北大路魯山人は文筆と陶芸を両方とも極めた作家で、今回は、魯山人が食器をつくりはじめた理由と、その始め方について記していました。陶芸はそもそも巨大な煙をはきだす窯が必要なわけで、豪勢な、仕事をした人だなあと思いました。
 

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追記 本文とは関係が無いんですが、新しい仕事が相乗効果になる場合と、二兎を追う者は一兎をも得ずになる場合とで、いったいどうちがうんだろうかと、思いました。
 

念仏と生活 倉田百三

 今日は、倉田百三の「念仏と生活」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは仏教の信仰について記している随筆でした。浄土真宗の南無阿弥陀仏のことについて記していました。はじめに、善人だと欲望を自身で制御できるという自力があるので仏教の「信仰に到達しない」と記しています。ふつう人間には欲望があって、欲望が生命力になっている。同時に「いい人間になろうと考え」るので、自己の欲望と、良い人間性、この二つが衝突しているところに、倉田百三の考える、仏教と念仏がある。
「欲望が弱いならば、信仰はいらない」と倉田百三は述べます。もうちょっとほかの仏教の本を読んでみたいと、思いました。
  

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