五月の詩 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「五月の詩」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 坂口安吾と言えば、戦後になってから特攻隊の死と生について論じた、武士道の次の世界について描く、迫力のある作家だと思うんですが、今回は、武士の物騒なはなしから随筆がはじまります。現実に起きたおそろしい話もしていて、これって怪談のつもりではなく書いているのが、なおさら怖いと思いました。度胸だめしで、無理をしすぎて恐ろしいことが起きてしまうことをいくつか記しています。坂口安吾の「いくら僕が馬鹿でも、そんな意地は張らぬ」という記載が妙に印象に残りました。
 戦時中の新聞をまとめて読んでみるということをしたことがあるんですけど、このころの新聞は防衛論も非論理的でひどいものなんですけど、これを戦中なのにしっかり批判出来た作家は、ほとんど居ないように思うんです。坂口安吾はそのへんもはっきりと批評していて、時代を超える人は……すごいもんだと思いました。
「日本といふ国は変な国なんだ」という指摘とその前後に読み応えがありました。
 坂口安吾はぜったいにこの随筆で感動をもたらそうとしていないはずなんですが、安吾の怒り、不遇の者の心情を慮る態度に感嘆せざるを得なかったです。こんな危険な時代に、どうして無事でずっと太く生きられたんだろうかと、思いながら読みました。悲惨な戦争が終わるまであと3年もかかる、1942年の随筆でした。

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麦畑 宮本百合子

 今日は、宮本百合子の「麦畑」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 宮本百合子が古い故郷の女たちを描いている随筆です。うこぎ、という植物を生け垣にしておいて、それをお味噌汁に入れて食べるそうです。食べられる垣根というのは不思議な感じがします。それから百年くらい前に女たちが好んでいた占いについて書いています。近未来のできごとをなぜか言いあてる占い、偶然にもよく当たる占いについて、農作業をしながら話している……。

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追記  ポロックでもデュシャンでも、偶然を上手く活かすのが美術の重要な技法ですけれども、占いや、恋愛や交流や未来について考えることも、この偶然性というのをどう活かすかにかかっているのでは、とか思いました。
 

Audibleのおすすめ文学作品

 AmazonのAudibleは、今キャンペーン期間中なので0円で数万冊の本を聞くことが出来ます。
(通常は月額1500円です)
 Audibleは2022年現在、2種類の本があります。Audible会員なら0円で聞き放題の本が数万冊あって、千円以上を払わないと読めない本もたくさんあります。今回は、聞き放題のオーディオブックを何冊か紹介したいと思います。
 
ミヒャエル・エンデ『モモ』 ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』
ぼくは『モモ』を何年か前にKindleで完読したんですけど、Audibleでも0円で聞けるようになっています。
オーディオブックで小説を聴くときは、wikipediaで登場人物表を表示しながら聴くと、内容を理解しやすいです。眼で読めば分かるはずなのにどうも耳だけでは理解しにくい、ということがいくつかのオーディオブックを聞くと分かるんですけど、ぼくは「ブッダ」の本がなぜか聞きやすかったです。誰もが理解できるように、短くうまくまとめた教えだから、耳で聞いても分かりやすいんだと思います。耳で聞きやすいというと「民話集」も聞きやすくてお薦めです。そもそも口伝の文学作品ですし。
 
ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』
ラジオドラマ風に演出されたオーディオブックです。

『茨木のり子詩集』 劉 慈欣『三体』 パウロ・コエーリョ『アルケミスト: 夢を旅した少年』 ジョージ オーウェル『一九八四年』 アゴタ・クリストフ『悪童日記』  ドストエフスキー『クリスマスと結婚式』 レイモンド・チャンドラー シェイクスピア フランツ・カフカ 芥川賞 漢詩 老子 ほかに「菜根譚」「源氏物語」や「方丈記」や「徒然草」「土佐日記」「平家物語」「今昔物語」「おくのほそ道」などの古典名作の数々がおすすめです。
 
登場人物が多い長編文学は、手もとに紙の本か電子書籍があって、眼と耳を同時に使わないと、ちょっとこれはむずかしい、目隠し将棋のようになってしまいます。ですので、オーディブルの中から読みたい本を見つけて、kindle版を購入するか、図書館で借りてきて机の上に開きっぱなしにしながら、眼と耳で読むのをお勧めします。あと、詩集は耳だけでじゅうぶん楽しめます。エッセイも耳のほうが楽しめるくらいです。やさしい文章でしるされた本を探すことをオススメします。
 

digitalbookartimagesono00743 - Audibleのおすすめ文学作品

 
1日に10数時間ほど再生しても100日で100冊以上はたぶん読めないです。ほかにもユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』『ホモ・デウス』や、ジャレド ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』も、はじめから最後まで、完読できます。あっとうてきな気合と知力とメモの技量さえあれば……。
 
聴き放題の0円で聴くには10日以内の2022年5月11日までに【Audible会員2カ月間の無料体験】に登録する必要があります。
 
 無料期間中に解約する方法はこちらをご覧ください。
 
このページをお気に入りに登録して、この機会に【Audible会員2カ月間の無料体験】で名作の数々をお楽しみください。クレジットカードをまだ持っていない人や、amazonを使ったことがない場合や、おしくも無料期間に登録できなかった場合は、明かりの本の0円オーディオブックをお楽しみください。登録なしでオーディオブック機能を楽しめます。

美味論語 北大路魯山人

 今日は、北大路魯山人の「美味論語」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 本を読んでいて、べつのことを考えることは多いと思うんです。こんかい魯山人が「論語」という言葉までつかって美味を語ったこの短い随筆で、魯山人は、食えないものを食えるようにする調理法について論じているんですが、不味いものはもうけっきょくどうやっても不味いままだと言っています。これは絵画の創作論とかでも言えることで失敗した絵についてはいったん白紙にして一から作ったほうが上手くいくんだとか、洋画は塗り足し塗り足しが出来るのに日本画はミスできないし、そこは洋食と和食のちがいと似ているのではとか、なんだかいろいろ連想しました。
 良質か悪質かをちゃんと見きわめて、と魯山人は記します。
 

0000 - 美味論語 北大路魯山人

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上野 永井荷風

 今日は、永井荷風の「上野」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 上野の桜と不忍池について、永井荷風がその歴史を記しています。吉野の山からもらってきた桜の種で、上野に桜を咲かせた人々が居たようです。ほかにも枝垂桜や八重咲の桜のある社寺について記しています。永井荷風は漢詩人の森春濤の墓参りをしている。森春濤についてはwikipediaにも記されていました。しだれ桜の美麗さがもっとも良いと、永井荷風が記しています。グーグルでこれを眺めながら、百年前の散歩について想像をめぐらせました。
 永井荷風は、根津遊郭についていろいろ記しているので自分でも調べてみたのですが、wikipediaにはこう記されていました。
quomark03 - 上野 永井荷風
  東大生だった文豪の坪内逍遥は根津で見染めた遊女・花紫を後に妻に迎えているquomark end - 上野 永井荷風
 
 百数十年前と今では文化がずいぶんちがったように思いました。松本清張がこのことを取材して小説にしているらしいです。連続ドラマかなにかで、このことをもっとちゃんと知りたいなあと思いました。本文こうです。
quomark03 - 上野 永井荷風
 根津の遊里は斯くの如く一時繁栄を極めたが、明治二十一年六月三十日を限りとして取払われ、深川洲崎の埋立地に移転を命ぜられた。quomark end - 上野 永井荷風
 
 これらの遊郭は戦後にもいちおうは残っていたようですがwikiを調べると1958年(昭和33年)ごろの法律改正によってほぼ無くなっていったようです。永井荷風と坪内逍遥は、遊里と深い関わりのある人生だったんだなあと、改めて思いました。
 政府によって移転を命じられて、ごく一般的な温泉街に変化していった遊里がおおかったようです。いま、コロナ禍で世界中の業態が大きく変化している最中であると思うので、この遊里の変貌についての記載は印象深かったです。
 駅の停車場が公園に近すぎて景観が損なわれている、上野公園の風趣について永井荷風がいくつかの問題点を指摘しています。昭和2年の随筆でした。
 

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落語家たち 武田麟太郎

 今日は、武田麟太郎の「落語家たち」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 小説家の武田麟太郎が、落語の衰亡や繁栄について詳細に論じているもので、吉本や宝塚が落語の世界に入って商売をはじめたころのことが記されています。ちょっと調べてみると吉本だけでなく宝塚も、現代の落語との関わりがあるようです。噺家を招いて落語の教室とかを定期的に行っています。80年くらい前の業態がどこか残っているところがあるのでは、と思いました。
 武田麟太郎は、職人集団である「ギルド的」な古い落語の世界に思い入れがあるようです。「ポピュラー」なものではなく、権力や強者に媚びを売らない古い噺家の姿を描きだし、この古い世界が滅びつつあることを憂いているのでした……。
 

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