全体の一人 陀田勘助

 今日は、陀田勘助の「全体の一人」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはごく短い詩で、氏が獄中から書き送った作品です。ほんの百年前は言論の自由さえ無いほど厳しい時代だったということが見えてくる、ひとつの詩に思いました。彼は当時禁じられていた共産主義の東京地方委員長だったため投獄されたのですが、氏は芸術のダダイスムを愛する詩人そのものだったように思いました。秩序や常識を打ち壊すトリスタン・ツァラのダダ宣言に連なる芸術へと分け入った陀田勘助の後期の詩でした。ツァラはこういう詩的な宣言を、記しています。
quomark03 - 全体の一人 陀田勘助
 ダダは何も意味しない。
 ルーマニア語では「はいはい」という肯定の重複語。DADA。
 博学な記者たちはこれを「赤ちゃん向けの芸術」と見なし、他の聖人たちは「現代の幼子たち」と呼び、乾いた原始主義へ回帰し、騒々しく単調である。
 あらゆる絵画や造形作品は無用のものである。秩序が無秩序となっていて、私は私ではなく、肯定は否定である世界。これらが絶対的な芸術の至高の輝きである。quomark end - 全体の一人 陀田勘助
 
 ただ政治と芸術をこころざしただけであるのに獄死した陀田勘助にとってトリスタン・ツァラのダダ宣言は、生きる歓びをかたちづくった要の存在だったのでは、と思いました。
 

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暗い天候 中原中也

 今日は、中原中也の「暗い天候」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 中原中也「山羊の歌」の「冬の雨の夜」の、続編としての詩が、この「暗い天候」なのだそうです。
 秋から冬へ向かう暗さが、暖房の効果が得られない百年前では、今と比べものにならなかったのでは、というように思う近代詩でした。近代の魅力が凝固したような詩に、思いました。「畜生」という言葉が詩の中で描きだされていて印象に残ります。
 quomark03 - 暗い天候 中原中也
 犬が吠える、虫が鳴く、
  畜生! おまへ達には社交界も世間も、
 ないだろ。着物一枚持たずに、
  俺も生きてみたいんだよ。quomark end - 暗い天候 中原中也
 

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冬と銀河ステーション 宮沢賢治

 今日は、宮沢賢治の「冬と銀河ステーション」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 
 そらにはちりのやうに小鳥がとび
 かげろふや青いギリシヤ文字は
 せはしく野はらの雪に燃えます
 
 という言葉から始まる、賢治の代表的な詩を読んでみました。
 にぎやかな土沢の冬の市を描きつつ「銀河軽便鉄道」が「幾重のあえかな氷をくぐり」「パツセン大街道」から「うららかな雪の台地を」ゆくさまを描きだしています。
 

0000 - 冬と銀河ステーション 宮沢賢治

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追記   謹賀新年  明けましておめでとうございます。今年も近代文学の中から、あまたの詩を抽出して読んでゆきたいと思います。

明かりの本は現在、お正月休み中です。更新は1月5日からです。
賢治の文学壁紙を1枚、作ってみました。PCやタブレットの壁紙に利用できます。

bungakukabegami202501 - 冬と銀河ステーション 宮沢賢治

ゲーテ詩集(72)

 今日は「ゲーテ詩集」その72を配信します。縦書き表示で読めますよ。 
 古代ギリシアへの愛敬と、自然賛歌を厳かに書き記す、ゲーテの詩の一篇でした。
quomark03 - ゲーテ詩集(72)
たとへ堅い骨もて
ゆるぐことのない
不変の大地に
立つてゐようとも
樫の樹ほども
葡萄の蔓ほども
高く延びえぬ
身の…………
…………
……quomark end - ゲーテ詩集(72)
全文は以下のリンクから読めます。
 

0000 - ゲーテ詩集(72)

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全文を読むにはこちらをクリック
 
ゲーテ詩集はあと10回ほどありますが、月に1回ほどのペースで読みつづけようかと思います。

四季 槇村浩

 今日は、槇村浩の「四季」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは四季おりおりの情感を童心とともに記した、ちょっと謎の詩で、他の槇村浩の諸作では深刻な政治闘争問題を主題としたもので今回の詩と、かけ離れているところがあるようです。
 四つの季節を描きだしているのですが、秋の詩がなんだかすてきでした。
 

0000 - 四季 槇村浩

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僕の孤独癖について 萩原朔太郎

 今日は、萩原朔太郎の「僕の孤独癖について」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 欧米でも近代日本でも、作家といえば社交的で、世界中の人々と幅広く交際しているという……ゲーテや鴎外のように、人づきあいの盛んな人が多いと思います。ところが萩原朔太郎はそうではなくて、昔から「人嫌ひ」「交際嫌ひ」で小中学校でもさんざんいじめられてしまって「人嫌ひになり、非社交的な人物になつてしまつた」
 それだけではなく困った癖があって「意識の反対衝動に駆られ」て「例へば町へ行かうとして家を出る時、逆に森へ行けといふ強迫命令が起つて来る」さらには、愛すべき友人に対して、ののしりの言葉が口をついて出てしまう、というのでした。
 その萩原の好きな哲学者は、ニーチェやショーペンハウアーで、思想上でも孤高を好むようになっていった。
「詩人と、哲学者と、天才とは、孤独であるやうに宿命づけられて居る」というショーペンハウアーの言葉を愛して「常に群集の中を徘徊してゐる人間は、この世に於て、常に最も孤独な寂しい人間なのである」というボードレールの言葉を信じ「常に孤独で居る人間は、稀れに逢ふ友人との会合を、さながら宴会のやうに嬉しがる」というニーチェの言葉に、生の喜びを知るのでした。萩原は本を読んで、言葉を記すことが、魂を治癒し慰撫をもたらすものであると考えているようです。
 破天荒で人との諍いが絶えなかった青年時代を過ぎ、成人すると神経が図太くなって、日ごろの妄想も減退していった。
 若いころの性格とはまるで異なっていって「代りに、詩は年齢と共にまずくなつて」平凡な人間性に至っていったという自己分析をしているのでした。萩原はまたこう書きます。
quomark03 - 僕の孤独癖について 萩原朔太郎
  ニイチェは読書を「休息」だと言つたが、今の僕にとつて、交際はたしかに一つの「休息」である。人と話をして居る間だけは、何も考へずに愉快で居られるからである。quomark end - 僕の孤独癖について 萩原朔太郎
 
 次の文章が印象に残りました。
quomark03 - 僕の孤独癖について 萩原朔太郎
  友人が無ければ、人は犬や鳥とさへ話をするのだ。畢竟人が孤独で居るのは、周囲に自分の理解者が無いからである。天才が孤独で居るのは、その人の生きてる時代に、自己の理解者がないためである。quomark end - 僕の孤独癖について 萩原朔太郎
 
 さいごの「ミネルバのふくろうは迫り来る黄昏に飛び立つ」というのはこれはヘーゲルが記したローマ神話のエピソードなんだそうです。萩原が記した一文がなんだか、印象に残りました。
quomark03 - 僕の孤独癖について 萩原朔太郎
  ミネルバの梟は、もはやその暗い洞窟から出て、白昼を飛ぶことが出来るだらう。僕はその希望を夢に見て楽しんでゐる。quomark end - 僕の孤独癖について 萩原朔太郎
  

0000 - 僕の孤独癖について 萩原朔太郎

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