論語物語(10) 下村湖人

 今日は、下村湖人の「論語物語」その10を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 大廟の祭典という「最も重要な祭典」の指導者に、ついに孔子が推薦されたんです。孔子はその祭典の現場にゆくとなぜか、儀式のこまかな進行について、ほとんど誰でも知っているようなことをひとつひとつ質問し続けたんです。そのために周りに居た人びとはちょっと呆れてしまった。一番弟子の子路は孔子にたいしてもうちょっと威厳のある立振舞をしてほしいと苦言を呈しました。このとき、孔子はこういうように述べています。
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 礼は敬しみに始まって、調和に終らなければならない。然るに、今日私が皆さんにお訊ねした結果、皆さんのお気持を害したとすると、私のどこかに、礼に叶わないところがあったのかも知れない。quomark end - 論語物語(10) 下村湖人
 
 それから、今回は論語の重要な方針が記されていて『子曰く、学んで思わずば則ちくらし。思うて学ばずば則ちあやうし』ということについて論じられていました。下村湖人はこういう現代語で書いています。 
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 学問に大切なことは、学ぶことと考えることだ。学んだだけで考えないと、道理の中心が掴めない。だからいつも行き当りばったりだ。(略)むろん考えただけで学ばないのもいけない。自分の主観だけに捉われて、先人の教えを無視するのは、丁度一本橋を渡るように危いことだ。quomark end - 論語物語(10) 下村湖人
 
 孔子は「自分を誇示したい念が急なために生じた」思い、というのを問題視しているんです。それはまさに「生命の真の願いを自ら暗ますものだ。そしてそれが人間をして無知ならしめる最大の原因だ」と孔子は述べているんです。孔子にとってとても重要な弟子である子路でさえ、そういう間違った思いを抱くことがある、それを孔子が戒めていました。
 論語は、子供のために現代語に要約された児童書も多いんです。下村湖人は誰にでも読めるやさしい日本語で書いているんですけど、とくにこの箇所に対する細心の注意を払って物語を構成しているように、思いました。(そのためにちょっと野暮ったい内容になっているところがあると思うんです)
 

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論語物語(9) 下村湖人

 今日は、下村湖人の「論語物語」その9を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 お金に無頓着な人は無欲なものだと思いがちですけど、金や権力を求めない人でも、欲がきつすぎてまずい、ということはあるのだ、という孔子の指摘がおもしろかったです。我欲に打ち克つ力があってはじめて剛健な男になれる……ちょっとぼくの要約がおかしいので本文を読まないと孔子の考察のすごさが伝わらないかと思うんですけど、論語は長く読みつがれている本なだけあって……身内に対する批評精神がするどく、批評ってこういうことを言うんだなと納得するんです。そこが最大の魅力なんだと思います。
 

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論語物語(8) 下村湖人

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 今回は、孔子が「中庸の徳は至高至善のもの」と言うんです。ちょっと調べてみると、中庸にかんする記載が、儒教の四書の中のかなり大きな割合を占めている。「中庸」の教えがあって、これをさいごに学びなさいと孔子一門は言っているようです。例によってwikipediaの「中庸」頁が、分かりやすく記されていました。平均値の中間のところを中庸というのではなくて、問題が起きている現場で、両陣営にとって価値のある学問なり技術なりを作れる力がないと……中庸は生じがたいような気がしました。
  

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論語物語(7) 下村湖人

 今日は、下村湖人の「論語物語」その7を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 宰予は、昼寝をしてしまって授業に遅れた。失敗をしたときに口先でごまかす、というのを孔子はかなり問題視して、こんかい弟子を大声で怒鳴りつけているんです。……これはどういうことなんだろうと、かなり読んでいて分かりにくい。遅れたことよりも、言語や学問に対する不徹底さを、孔子は憂慮しているようです。
 孔子が言う「学問は自分のためにするので、他人のためにするのではない」という……世間から隔絶されたところに学問がありうる、という話しは、腑に落ちました。ランボオは二十歳をすぎたら文学の世界から出ていった。美術はまさに、島に一人で篭もって音信不通となって楽園を描きつづける人こそがすごいわけで、そういえば孔子がいちばん重大視した顔回は、けっきょく学問を政務に役立てる人生では無かったし、学究は、世間と結びつかないところにあるように思いました。
 

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論語物語(6) 下村湖人

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 孔子がもっとも重大視した弟子は、勇猛な子路と、無欲な顔回の二人います。
 顔回は身体が弱いので、激務をこなす役人になれる可能性はほとんど無い。
 孔子は、顔回の仁を重んじて生きる姿をいつも高く評価してきた。
 冉求ぜんきゅうは、はじめは顔回の生き方を、ただ慰めを求めて学問に馬鹿正直になっているだけだと思い込んでいたのですが、孔子の教えを学ぶうちに、顔回の素朴な学び方こそが重大だと分かるようになってきた。
 

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論語物語(5) 下村湖人

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 今回の物語を一言で表現すると、巧言令色鮮し仁こうげんれいしょくすくなしじんということだと思うんですけど、これが生まれつきの軽薄さから来るのでは無くて、状況を推し進めるときに、必然的にウソが入り混じっていって、最後には虚偽のほうが中心になってしまう、という展開が印象深かったです。子路は孔子一門を有名にするために、実力が足りない人を要職につけてしまい、孔子はこの問題について直接論じるんです。今回は言語論についての考察でもあって、普通に勉強になる話しだと思いました。
 本文とは関係が無いんですが、要職に登用をされると、リスクが激増してしまう……ということを思いました。
 子路は、この小説だけを読むと、調子乗りの知者のように見えるんですけど、ほかの論語の本を読むと、孔子の一番弟子のような存在の、古参の大男で、孔子に出会うまえはたいへん野蛮な男で、孔子一門の中でもっとも武勇に長けた、戦闘的な男だったそうなんです。wikipediaで子路について書いていたので、これが参考になると思いました。
  

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