今日は、夢野久作の「少女地獄」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
近代でいちばんヤバイ作家といえば、まちがいなく夢野久作だと思うんですが、今回は氏の代表作のひとつの「少女地獄」を読んでみました。
姫草ユリ子の不幸と「地獄絵巻」について「小生」が述べ始めるところから物語が始まります。「彼女は、貴下と小生の名を呪咀いながら」夭折してしまった。読んでいるとなんだか、ホラー映画よりも不気味な内容が序盤から目白押しなんです。
はじめは、姫草ユリ子との出会いの場面が描かれます。そこでは住むところの無い、可哀想な少女の姿が描きだされるんです。ある病院の医院長である「私」は、姫草ユリ子を雇ってあげる。身体の汚れを落とすと、驚くほどの美少女だった。はじめは可憐で働き者の彼女に満足していたんですが、だんだん妙なことになって来る。真面目な少女の致命的な嘘が膨らみ続ける。姫草ユリ子は真相がばれてしまうと、ひどい状況になってしまうような致命的な嘘を積み重ねるという、おそろしいことをつい好んでやってしまう。年齢も詐称していた、実家も詐称していた、職歴も詐称していた、結婚詐欺師くらい徹底的に嘘だらけだった、その実体を探った「私」は、畏るべき事態に遭遇する。姫草ユリ子の破綻を中盤から後半にかけて追ってゆくという展開でした。ドグラマグラでも思ったんですが、今回も病院の暗部が描かれるのでした。夢野久作は、大病院の巨大な詐称ということに深い関心があったのでは、と思いました。この「少女地獄」の「何んでも無い」は中盤で完結します。後半からは「殺人リレー」や「火星の女」という別の小説が記されています。廃墟にたたずんで、校長先生の不正を暴くために聞き耳を立てている、暗闇の少女の姿がじつに不気味でした。
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