歌麿懺悔 邦枝完二

 今日は、邦枝完二の「歌麿懺悔」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これをぼくははじめて読んだんですが、江戸の戯作にそっくりな小説を、現代文で書いたもので、流暢に流れるような展開の、落語を現代小説にしたような、江戸の風流な作品でした。浅草の花街で遊び続けてきた、彫師で絵師の歌麿の話なんです。展開が西洋近代小説みたいにわかりやすくてみごとなんですけど、内容はまさに江戸の戯作なんです。歌麿の弟子の亀吉が、ある遊女にからかわれて逃げだしてきた。その話を聞いた師匠は、なにか謎めいた理由があって、その旧知の遊女「おちか」にすぐ逢いに行ってみる。するとどうしたことか、その場に、謎の男が現れて、仰天して歌麿はその場を逃げだしたんです。その謎の男というのが……つづきは本文でごらんください。

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追記
 ここからは完全にネタバレなので、本文を先に読んでもらいたいのですが、遊女と密会をはじめた瞬間に現れたのが、なぜか江戸の町奉行の刑事(というか同心)の渡辺金兵衛だったんです。主人公の歌麿は金兵衛にかつて逮捕されているんです。彫師で絵師の仕事をしていたころ、絶対に悪いことをしていない自信があったのに、虚をつくように逮捕されて罪人にされてしまった。五十日間の実刑判決で、歌麿は投獄されて、それはもう生きた心地がしない日々を送ったんです。
 三島由紀夫の金閣寺の元ネタがこの「歌麿懺悔」かも、と思うような描写もあるんですけど、とにかくこの邦枝完二の短編は流麗な展開で、読んでいてなかなか興味を引かれました。え? この謎はなんなの? というようなことが説明なしに次々たたみかけられて、それでいて筋を追いやすい分かりやすい構成でもあるので、読みやすくて魅力的な本でした。江戸の戯作ってこういうおもしろさなのかなあ、と思いました。